■ファミコン探偵倶楽部PARTU うしろに立つ少女


全体を通して流れる「火曜サスペンス劇場」風の音楽が耳に心地よいアドベンチャーゲーム、 スーパーファミコン版「ファミコン探偵倶楽部PARTU うしろに立つ少女」です。
1988年、ファミコンディスクシステムにおいて 「ファミコン探偵倶楽部」というゲームが発売されました。 今回の「うしろに立つ少女」はそのディスクシステムで 2枚組ADV第2弾として発売されたゲームです。

■「ファミコン探偵倶楽部」の歴史をおさらいしてみます。

ファミコン探偵倶楽部シリーズは全部で4作品あります。
1作目はファミコンディスクシステム「ファミコン探偵倶楽部−消えた後継者−」(1988年)。 探偵助手である主人公は記憶喪失になり、 遺産相続をめぐる殺人事件に巻き込まれていく、というストーリーです。
2作目がファミコンディスクシステム「ファミコン探偵倶楽部PARTU−うしろに立つ少女−」(1989年)。 今回のニンテンドーパワー版のもとになったゲームです。 1作目から3年前の物語で、主人公が探偵助手となったところから始まります。
3作目はスーパーファミコン「BS探偵倶楽部−雪に消えた過去−」(1997年)。 サテラビューシステムを用い、登場人物が喋るようになりました。主人公は1作目、2作目のヒロインである「橘あゆみ」です。 連休を利用して帰省したあゆみを襲ったのは 落武者伝説の伝えられる謎の殺人事件だった・・・という物語です。
そして、2作目のリメイクである スーパーファミコン「ファミコン探偵倶楽部PARTU−うしろに立つ少女−」ニンテンドーパワー版(1998年)。 ディスクシステム版のときに比べ、グラフィックやサウンド面が大幅に改良され、遊びやすくなりました。 また、ゲームをクリアするとそれまでのプレイヤーの選択に応じた性格判断や、 ファミコン探偵倶楽部シリーズのヒロインである「橘あゆみ」との相性チェックといったおまけもつきました。
ゲーム内容はよくある選択肢総当り式のアドベンチャーゲーム。 主人公は探偵助手の少年で、とある殺人事件がきっかけで事件に関わる 「うしろに立つ少女」の謎を追うことになる、という物語です。 システムとしては特に目立つようなところはなく、非常に地味なゲームだといえます。 しかし、ストーリー、音楽、キャラ、そのどれもが密接な相互関係を持った、非常によく練りこまれた珠玉の作品です。

■このゲームの素晴らしい点はやはりストーリーという点に収束されます。

「うしろの少女」という奇妙な謎に立ち向かう主人公たちには、時として恐怖が襲いかかる事もあります。 主人公の前には次々と謎が立ち塞がりながら話が進んでいきます。
しかしプレイヤーが置いてきぼりにされるということはありません。 事あるごとにヒントを与え、プレイヤーに推理させる機会を提供しているのです。
そうした事件の内容をきちんと咀嚼できるように施された展開のおかげで、 プレイヤーは事件や犯人、そして「うしろに立つ少女」について自分なりに推理することができ、物語に流されていくといった感を覚えることはないのです。
この推理するという感覚は絶品で、 例えばテレビのサスペンス物を観ても、ただただ流れる映像に身をゆだねるだけのわたしが 常日頃に思っていた「自分で考えたい」という不満を解消し、「自分で考える」面白さをはっきりと感じたほどです。
しかも主人公は15歳の探偵助手であり、 煙草を咥えた渋い私立探偵やIQウン百といった天才ではありません。 そのぶん突飛なアイデアや閃きはありませんが、おかげできちんと筋道をたてて理解していくことが出来ます。 主人公と一体となって推理していけるということです。
とにかく、プレイヤーの視点にたったゲーム作りが成功した賜物であることは間違いありません。

■つぎに登場するキャラたちの魅力です。

主人公である探偵助手は15歳の少年です。 ゲーム中では少年探偵団の小林君の如く事件解決に向けて調査を進めます。
頭が切れるかといえばそうでもなく、女の子の前で男らしいところを見せようとしてどじを踏んでしまうようないたって特徴のない人間です。 このおかげで誰もが馴染みやすい物語になっています。
そして、本作の、ひいてはファミコン探偵倶楽部シリーズのヒロインである 「橘(たちばな)あゆみ」、15歳高校1年生の少女です。ゲーム冒頭で殺されてしまった友人の無念を晴らすべく主人公に協力してくれます。かわいらしい少女で、肩から前に垂らした三つ編みがよく似合います。友人が殺されてしまった為か、どこかさえない顔を見せます。 ゲーム中盤で事件解決を試みるあまり、無茶なことをしてしまったりと 本作において重要な役割を果たしています。
クリア後、彼女との相性チェックもできます。わたしは60%くらいでした・・・。 ゲーム中の選択肢によって変わるので、彼女に好かれるように行動するのが吉です。
この2人のほかにも、事件に関わる関わらずを除いて 個性的なキャラが多く登場します。
主人公を支える男前の探偵、「空木(うつぎ)」。 不良男子ですが名前は「ひとみ」の「河合ひとみ」などです。
彼らたちのほかにもいる多くのキャラクターたちの存在が、このゲームを名作たらしめているといっても過言ではありません。

■そしてゲーム中のサウンドです。

ディスクシステムの時代から、ファミコン探偵倶楽部は音に気をつかっています。 ファミコンの貧弱な画面と音でも恐怖を感じることができるほどです。スーパーファミコン版の今作ではそれがますますパワーアップし、 雰囲気を盛り上げる素晴らしいBGMと、ときには恐怖を、ときには笑いをもたらす効果音が巧みに用いられています。
とくに、要所要所で聞くことになる「うめき声」は背筋が凍るようです。部屋を暗くしてヘッドフォンを使うと臨場感が増すかもしれません。
ちなみに、「うしろの少女」の話とどこからともなく聞こえる「うめき声」を聞くにつれ おもわず後ろを振り向いてしまったことは一度や二度ではありません。
こうした点にまで気を配られていることがストーリーに奥深さを与えているに違いありません。

■さいごに・・・。

ゲームのストーリーも進み、後半、 これまでプレイヤーを悩まし続けてきた伏線がひとつに繋がり、ある程度犯人が推理でき、謎も解けかかった後半に訪れるどんでん返し。
予想だにしなかった事件の真相には言葉を失います。驚きっぱなしでした。
ちょっとネタバレになってしまいますが、探偵として人を疑うことの残酷さを思い知りました。こんなに悲しい思いをしなければ解決できないなんて・・・。 真犯人を知り、また自分を犠牲にしてまで最愛の人間を守ろうとした人物の最期を見納めたとき、わたしは知らず知らずのうちに涙を流していました。
疑ったりして申し訳ありませんでした、こう、彼に伝えたい気持ちに駆られました。
幾人もの人物の思想が交錯する世界で起こった、数年前の小さな事件は、 プレイヤーの手によって終わりを迎えることとなります。

現在に至るまで数え切れないほどの推理アドベンチャーゲームが発売されています。 どれも独自の趣向を凝らし、プレイヤーに謎を突きつけてきました。 その中で小さく輝く本作に出会えたことは替えがたい喜びです。
プレイ時間7時間のゲームは、育ちすぎたゲーム業界に警鐘を鳴らすべく、 今日も新たなプレイヤーを待ち受けているはずです。

  • ファミコン探偵倶楽部U うしろに立つ少女
  • 任天堂 1998年作品    
  • スーパーファミコン
  • 書き換え料 3000円

2001/3/23(2003/7/16)

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