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言語心理学 pscholingustics -1-

行動主義と認知心理学

◆心理学の語源
心理学(英:psychology/独:psychologie)…psychologyはプシュケーというギリシャ神話に登場する女神の名前に由来。プシュケーはギリシャ語で「息を吐く」という意味のアポプシュコという言葉に由来する。

◆心理学の定義
・人間及び動物の行動を説明するための科学
・なぜ「心」ではなく「行動」なのか?
行動 ─ 観察出来る
心 ─ 観察出来ない

◆心理学の成立に影響した要因
‐ 心の存在の証明 ‐
[ルネ・デカルト](1637)の方法序説 "Cogito, ergo sum"「我思う、ゆえに我あり」
→デカルトは、自分で自分の心について考えるという方法(内観法)を通して心の存在を証明した

‐ 自然科学の発達 ‐
・17~18世紀の自然科学の発達
・物理学 ─ 科学的方法(客観的観察・帰納法)を使って、我々の周りの物の世界の在り方について説明する
・心理学 ─ 科学的方法(客観的観察・帰納法)を使って、我々の内側の心の世界の在り方について説明する
└→1879年、[ヴィルヘルム・ヴント]がドイツのライプチッヒ大学に世界で最初の心理学研究室を設立

◆初期の心理学と内観法
・内観法による心の観察
・客観的態度による内観法の訓練
・どのような訓練がなされようとも、内観法とは自分で自分について報告する方法であり、この方法に基づいた報告は主観的報告にすぎず、客観性は保証されない。

◆相互主観性(=客観性)
・すべての人の主観的報告が一致した場合、そこに相互主観性という性質が生じる。この相互主観性により、客観性が定義される。

◆行動主義
・客観性を保証するために、物理的実態を伴わない概念の使用を禁止。心、意識、期待、意図などの用語の使用禁止。
・研究対象は客観的観察が不可能な「心」ではなく、あくまで客観的観察が可能な「行動」
・行動を客観的観察が可能な刺激と反応との対応関係として記述(S‐R心理学)
刺激(Stimuls) → 反応(Response)

・刺激と反応との対応関係の観察を通して、刺激‐反応間の対応関係に潜む規則・法則を発見する。発見した規則・法則に基づいて、行動を説明したり、予測したり、コントロールしたりする。
 規則性
 刺激 → 反応


・行動主義の遺産:条件づけ理論
古典的条件づけ:直接経験による他律的学習
道具的条件づけ:直接経験による自律的学習

◆行動主義の問題点
・行動を刺激と反応との対応関係として記述するということは、我々の行動(反応)が常に、与えられた刺激の物理的特徴により決定づけられるということを暗黙に仮定している。

同じ物理的特徴を持つ刺激に対して異なる反応が生じる。
同じ文字なのに上は13と読み下はBと読まないだろうか。


世間の常識:行動Ⅰ≠行動Ⅱ
行動主義:行動Ⅰ=行動Ⅱ

◆行動の刺激独立性
・我々の行動は、与えられた刺激の物理的特徴により決定されるのではなく、その刺激がどのように認識されたか、その認識をもとに、どのような目標が設定されたかということに基づいて決定される

◆認知心理学
・我々の行動を説明するには、刺激と反応(行動)との間の規則性を記述するのではなく、むしろ、与えられた刺激がどのように認識され、その認識に基づいて、どのような行動が生じたかということを記述する必要がある。つまり刺激と反応(行動)との間の規則性よりも認識と反応(行動)との間の規則性を記述することが必要となる。
・この認識を表す概念として[表象](Representation)を仮定する
・表象とは物の世界と心の世界を繋ぐ概念

記憶

◆記憶の種類

刺激 → 感覚記憶 ⇒ 未処理の情報
容量∞
持続時間
・視覚0.3秒
・聴覚3秒
短期記憶 ⇒ 保持のための努力
①復習(リハーサル)
②精緻化
一次的な情報の保持
容量7±2
忘却
持続時間15~20秒
長期記憶 ⇒ 永続的な情報保持
◎検索の失敗

◆短期記憶の忘却

名称 内容 正誤
衰退説(減衰説) 保持のための努力が払われないなら、短期記憶内の情報は時間経過とともに消失する ×
抑制説(干渉説) 保持のための努力が払われないなら、短期記憶内の情報は互いに抑制し合うことにより、消失する

抑制
1)順向抑制
2)逆行抑制

      順向抑制    
短期記憶  
古い情報
新しい情報
 
時間
 
過去
 
逆行抑制
 
未来

※抑制は同タイプのみ(数字は数字、無意味つづりは無意味つづり)

心の科学と表象


◆認識されたものとしての表象
・我々は、外界に存在する物理信号を感覚器官を通して受容し、認識する。この知覚の過程は外界をそのまま写し取るのではない。むしろ、そこには複雑な解釈の過程が介在しており、我々の心に生じる認識は、この複雑な解釈の結果得られたものなのである。
・このように、知覚のメカニズムを考えるとき、物理刺激とその物理刺激によって喚起された認識(表象)とは区別されなければならない。

◆視覚情報処理のメカニズム
・物理刺激(遠刺激)と網膜像(近刺激)
・Marr(1982)の計算理論
1.境界線の検出
2.奥行き情報の復元(左右のずれから)
3.形の情報に基づいた意味づけ
・我々の視覚のメカニズムは、不安定で上下逆転した2次元の網膜像2枚をもとに、外界の様子を推測する。そこでは、複雑な解釈の過程を通して、安定し正立した3次元空間としての「見え」の世界から形成されるのである。


×2 →網膜像…目に映るもの

○行動主義
「刺激」→「反応」

○認知心理学
「刺激」→「表象」→「反応」


網膜像⇒
①境界線の検出(左眼‐網膜像‐右眼)

⇒3次元イメージへ(両眼視差:左右のイメージの違い)
⇒プライマリースケッチ
⇒②奥行き情報の復元
⇒2.5Dスケッチ
→③意味づけ
⇒"見え"の世界

◆物理世界と「見え」の世界との間のギャップ
・盲点
完結化…情報の欠如によって断続する境界を心的に連続し一本にする。
充填…情報の欠如した領域を他の領域の属性で満たす。
・錯視図形
フレーザーの螺旋図
ミュラー・リヤーの錯視
・全体野と静止網膜像
[固視微動]の役割([固視微動]:眼が少し動いている運動)

◆全体野(Ganzfeld)
視野全体にわたって光刺激の強度と波長が一様である場合、一様な灰色か暗黒しか見えない。

◆知覚の安定性
物の動き・変化
  眼球運動:眼は常に微動している(固視微動)
    ↓
  不安定な網膜像
    ↓
  安定した「見え」

◆静止網膜像
・刺激提示後、しばらくすると、それまで見えていた形や色が見えなくなる
・視覚系の神経細胞の多くが、外界からの刺激が変化した後の短い間だけ活動し、一定の刺激が持続する場合には活動しなくなることによると考えられる
・固視微動…眼は常に微動しているため、外界の像は網膜上を絶えず移動し、神経細胞は刺激の変化にさらされ続ける

◆表象の種類
・音韻的表象
  Conrad(1964)の混同行列に関する研究
・視覚的表象
Posnerら(1969)およびThorsonら(1976)による文字マッチング課題を使った研究
・意味的表象
Wickens(1972)の順向抑制の解除に関する研究

◆Conrad(1964)混同行列に関する研究
・実験
刺激:6文字からなるリスト
①視覚提示→系列再生/②聴覚提示→系列再生 誤反応の種類を分析
・いずれの場合も提示された文字を、それと音韻的に類似した文字と誤って再生することが多かった
(例)VはN、XよりもB、C、Pに誤って再生されやすかった
・つまり、提示された文字を音韻的表象として記憶しているものと考えられる

・以下の2種類に文字系列の記銘課題
1.音韻的に類似の文字系列(e.g,DCBTPV)
2.音韻的に類似していない文字系列(e.g,LWKFRT)
・音韻的に類似の文字系列の方が記憶が困難であった

◆Posner, Boise, Eichelman&Taylor(1969)
・文字マッチング課題
刺激 形態マッチング

刺激 形態マッチング 名称マッチング
AA Yes Yes
Aa No Yes
Ab No No

2つの文字を継時的に提示
・2つの文字の提示間隔が長くなるにつれて、形態マッチングの名称マッチングに対する優位性は、次第に認められなくなった
・この結果、視覚的表象の減衰過程を反映するものと考えられる

◆Thorson, Hockhaus&Stanners(1976)
・文字マッチング問題
視覚的に混同されやすい文字(e.g, O‐Q)┓
                    ┣継時的に提示されたときの「異」判断の反応時間に注目
音韻的に混同されやすい文字(e.g, P‐V)┛

 1秒以内…視覚的混同の効果
 1秒以降…音韻的混同の効果
・この結果は、視覚的表象の減衰に伴う、音韻的表象への移行を反映するものと考えられる

◆Wickens(1972)順向抑制の解除
・実験
  第1試行:果物リストの提示→妨害課題→リスト再生
  第2試行:果物リストの提示→妨害課題→リスト再生
  第3試行:果物リストの提示→妨害課題→リスト再生
   順向抑制により再生成績は次第に低下する。
  第4試行:異なるカテゴリーのリストの提示→妨害課題→リスト再生
   異なるカテゴリー項目を提示し、再生を求めると再生成績は、カテゴリーの意味的類似性に依存して回復する(順向抑制の解除)

◆物の世界と心の世界をつなぐ概念としての表象
・物理的な存在である認知システムが表象を持つということは、システムのある物理的な状態がある有意味な事象を指し示す記号として扱われる必要があるということを意味する。さらに、行動、すなわち、システムの物理的な状態変化が、我々にとって有意味な形で(つまり、どのような認識に基づいて、どのような目標達成のためにその行動が起こったかということが)説明されているということは、その記号がどのような規則に基づいて変換・操作されたかということを知ることであり、これらもシステムの物理的状態変化に関わる何らかの物理的法則に写像されていなければならない

◆心の科学とコンピューター
・科学は客観的観察に基づいてその研究対象の中に潜む規則性・法則性を探る活動である
・私達は友人の心を覗くことはできない。これは心が非物理的な存在であることによるものである
・科学という物理的な対象に対する研究法を使って心の働きを解明することは可能なのだろうか?

◆人とコンピューター
・コンピューターは入力された情報を記録し、解析し、運用することが可能な認知システムである
・人も外界からの刺激を受け取り、知識として蓄え、それを運用する
・人をひとつの認知システムと考えたとき、コンピューターという認知システムとの類似性を指摘することができる

◆認知システムの構造

コンピューター
ソフトウェア
ハードウェア 身体


コンピューターも人も、ともに2つの異なったレベルからなる認知システムである

◆コンピューターの仕組み
・情報をデジタルで扱う
・電気のON/OFFの判断だけで情報を扱うことができる
・数字ばかりでなく文字も2進数の配列として表現される
・AND,OR,NOTという基本的な論理演算(を実行するスイッチ)の組み合わせにより足し算、引き算、掛け算などが実行される

◆掛け算
ソフトウェア・レベル(意味理解可能な処理)
3×4=3+3+3+3=12

--------------------------------------------------------------------------------
ハードウェア・レベル(ハードウェアの性質に依存した処理)
0011(3を2進数で表記)
×22(左に2ビットシフト)
1100(十進数にすると12)
異なるレベルの処理は異なる法則に規定されるが、写像関係は維持される

◆人とコンピューターの行動・動作

       
   
意味解釈可能なシンボル操作
 
ソフトウェア  
   
 
   
何らかの規則に基づく写像関係
 
   
 
ハードウェア  
身体(脳の神経回路網)
   
理的因果法則に従った処理
 

・人をコンピューターと類似の構造を持つ認知システムと考えるなら、我々が心の中で扱うシンボル(表象)やその操作による作業は、常に脳の神経回路網上の特定の物理的状態及び状態変化に対応しているはずである

◆レベル間の写像関係
・心の中で行われる計算(シンボル操作)と脳神経回路網上の物理的状態変化との間に常に写像関係が成立しているなら、その写像関係を規定する規定さえ理解できれば、脳神経回路網の状態を観察することにより、心の中で何が行われていたのかを知ることができるはずである。
・つまり、科学の方法を使って心を理解することが可能となるはずである。
・コンピューター上で日本語を正しく表示するには、そのシステムにとっての正しいソフトウェア‐ハードウェア間の写像関係の規則(つまり正しい文字コード)が使われなければならない
・人の心と身体の間にも写像関係が成り立っているものであれば、それはどのような規則によるものなのだろうか。残念ながら、その規則はあまり単純なものではないようである。

◆文章の形態と意味
・我々が文章を読むとき、文字で構成された視覚情報を受け取って、心の中でその意味を復元する。したがって、文章には物理的レベルと心的レベルとの間の写像関係の規則が反映されている可能性がある
・文章形態の類似性は意味レベルにおける類似性とは対応しない。このことはシステムの物理レベルの状態と心の状態とが類似性に基づいた写像関係を持つわけではないことを物語っているようである。

◆まとめ:心の科学の可能性
・人もコンピューターも物理レベルと非物理レベルの処理が写像関係を維持しながら作業を遂行する認知システムである
・コンピューター上で使用する日本語コードの例にみられるように、こうしたシステムには、物理レベルと非物理レベルとの写像関係を規定する規則が存在する
・しかしながら、人の心と身体の写像関係を規定する規則は はなはだ複雑で、現段階では、まだほとんど理解されていない
・この規則が解明されれば、脳神経回路網の状態を科学的方法で観察することにより、我々の心の働きを理解することが可能となるはずである

認知システムの行動

◆行動を規定する要因
・我々の行動を説明するには、刺激と反応(行動)との間の規則性を記述するのではなく、むしろ、与えられた刺激がどのように認識され、その認識に基づいて、どのような行動が生じたかということを記述する必要がある
刺激 → 表象(認識) → 反応(行動)

◆チューリング・マシン
・有限個の規則に基づいて、無限の長さのテープの上に記録されたシンボルを操作する(読む・書く・消去するなど)ことができる機械
・この機械は、別のどのような機械とも同じ関数を計算することが可能(ユニバーサル・マシン)
・つまり、無限の入出力関係の組み合わせが、有限個の規則に基づいたシンボル操作によって実現可能となる。このことは、いかなるシステムの行動も規則に基づいたシンボル操作として記述可能であることを意味する

チューリング・マシン

規則
If A then X
If B then Y
If C then Z……

規則に従って紙に文字が記入される機械

実行サイクル
発振器→レジスターを参照(記憶装置)→インストラクションセット(If A,then X ……)→命令を実行

◆シンボル操作
・コンピューターの動作は、全ての操作として記述可能である
・人は、コンピューターと類似の構造や機能を持つ認知システムである
・したがって、人の行動(心的作業)も、シンボル操作として記述できる可能性がある

◆認知システムの基本機能と行動
・システムの行動を説明するには、システムの持つ機能的構造(機能的アーキテクチャー)についても理解する必要がある
・2つの関数は、同じ入力に対して同じ出力で返すが、この2つの関数の行う処理は同じとは言えない(Weak Equivalence)

◆Treisman(1986)の視覚探索課題A
・実験:刺激ディスプレイの中にターゲットが存在するかどうかをできるだけ迅速かつ正確に判断する

← ターゲット


視覚探索課題:条件A

並列型処理(Parallel Search)

ターゲットとディスクトラクターが、色・方向・大きさ・奥行きなどの単一の視覚的特徴によって弁別可能な場合、視覚探索に要する時間はディスプレイ上の刺激数に依存しない。

視覚探索課題:条件B

直列中途打ち切り型(Serial Self-Terminating Search)

ターゲットとディスクトラクターが、複数の視覚的特徴の組み合わせによって、はじめて弁別可能となる場合には、視覚探索に要する時間は、ディスプレイ上の刺激数が増えるにつれて長くなる。

・視覚入力処理は、機能的アーキテクチャーの基本機能のひとつと考えられ、そこでは自動的かつ並列的に色・方向・大きさ・奥行きなどの基本的特徴が検出される。したがって、それらの特徴によって背景から分離可能な対象は、特別の努力を払うことなく「ポップ・アウト」するように見える。それに対して、視覚入力処理系は、複数の基本特徴の組み合わせを自動的に検出することはできない。そのため複数の特徴の組み合わせによって規定される対象を検出するためには、提示された刺激を一つずつ順番に探索していかなければならない。
・このように提示された刺激の中から目標となる刺激を検出する際の探索方法は、機能的アーキテクチャーが認知系に対して、いかなる出力を与えるかということに依存していると考えられる。
・つまり、我々の行動は、我々が刺激に対していかなる認識を生じるかということにも依存している。

◆認知システムの構造


[モジュラリティー仮説]
・入力処理系は、物理的入力信号を受け取り、認知系が扱うことのできる特定の形式を備えた情報、すなわち表象に変換する変換装置である。この変換装置は、以下のような性質を持つ。
・この変換装置は表象を出力するが、この装置内部で扱われる情報は表象が生成される前段階の情報である。
・この変換装置は認知系とは独立に作動する刺激‐拘束的な要素である。それはまた、環境からのインタラプトないしデータによって駆動される。
・認知系が扱うことのできる情報は、特定の形式を備えた「表象」であり、物理的信号をそのまま扱うことはできない。また、物理的信号は、入力系の処理を経て初めて認知系が参照可能な表象に変換されるのだから、認知系は入力系内部で扱われている情報も扱うことはできないはずである。認知系と入力系が参照可能な情報形式の違いから、認知系は入力系の処理に対して直接的に影響を及ぼすことは不可能であると考えられる。つまり、入力系の処理は認知的に侵入不可能であると考えられる。

[インタラクショニズム]
・我々の持つ情報処理システムは、刺激の性質ばかりでなく、知識や文脈などの性質にも依存する。
・この事実は、我々の持つ情報処理システムが双方向の情報の流れを許すシステムであることを物語る。
  ボトム・アップ型処理/トップ・ダウン型処理
・したがって、入力レベルの処理も認知レベルの処理も知識・期待・意図などの認知的要因の影響を受けるものと考えられる。

まとめの問題

I.心理学の成立に大きな影響を及ぼした要因として、まず、(1)による(2)の存在の証明を挙げることができる。(1)は「方法序説」の中で、「(3)」と主張した。これは(2)の存在について考えるとき、考えるという行為を行う主体が存在しなければならず、その主体こそ「(2)」であるとの主張である。この考えに基づいて、(4)が(2)を直接観察するための唯一の方法であると考えられ、初期の心理学の研究法は専らこの(4)によるものであった。
 心理学の成立の影響を及ぼしたもうひとつの要因として、(5)を挙げることができる。例えば(6)は我々をとりまく世界に存在する物事に対する(7)を通して、そこに潜む規則性・法則性を明らかにしようとするものである。(6)はこの方法によって、我々のまわりの世界の在り方について多くの発見をし、数々の成果を挙げてきた。このような(5)に触発されて、心理学は、(7)を通して(2)の問題に取り組もうとしたのである。
 ところが、(6)の研究法は(8)を対象とするものであるのに対して、(2)は(9)であるため、(6)の研究法を応用して(2)を観察することは不可能であった。そこで、(4)を使った(2)の観察が行われたのである。しかし、(4)は自分で自分の心の在処を報告するという方法であるため、その報告は(10)にすぎない。(4)に頼る限り、心理学は(11)とはなり得ないのである。
 このような批判から、やがて新しい心理学が成立することになる。これは(12)と呼ばれる心理学であり、そこでは「(2)」を研究対象とするのではなく、(6)の研究法を使って観察可能な「13)」が研究対象とされた。(13)の観察を通して、そのなかに潜む規則性・法則性の解明を目指したのである。特に、(13)は常に、(14)に対する(15)として生起するものととらえられ、(14)と(15)との間の対応関係の中に規則性・法則性を見出そうとしたのである。パブロフの犬の実験に代表されるような(16)の理論は、(12)がもたらした代表的な遺産である。そこでは、(14)と(15)との対応関係が注目され、(17)は、(13)の説明から一切排除されたのである。
 確かに、(12)は(7)を重視することにより、(11)としての心理学の地位を確立したということができよう。しかし、(13)の説明に(17)を一切用いることができないということは、(13)を説明するのに、それがどのような目的・意図のもとに行われたのかという問題を問うことすら不可能にしてしまう。例えば、(12)の枠組みでは、「人が泣く」という(13)を問題にすることができても、その(13)の説明の中では、その人はうれしくて泣いていたのか、あるいは悲しくて泣いていたのかということを問題にすることができない。「うれしい」や「悲しい」といった(17)は、(13)の説明から排除されなければならないからである。
 また、(12)は、我々の(13)が、与えられた(14)と(18)によって束縛されると仮定する。ある特定の(18)を持った(14)は、それに対応する特定の(15)を誘発すると説明される。しかし、我々の行動は本当に(14)の(18)によって100%決定されるのだろうか。例えば、下図の枠で囲まれた部分を読み上げるよう求められたならば、我々は、一方を「13」と読み上げるのに対して、もう一方を「B」と読み上げる。このことは、我々の(13)が、必ずしも(14)の(18)のみに依存するものではないという事実を物語っている。むしろ、我々の(13)は(14)をどう認識したかということに依存して決定するようである。これは(19)と呼ばれる特徴であり、(12)は、これを説明できない。こうした(12)に対する批判から、さらに新しい心理学が生まれることになる。これを(20)と呼ぶ。(20)では、与えられた刺激が認識されたものを「(21)」という概念を使って表現する。この概念を使うことによって、(20)は、(7)に基づいて、(2)の問題に取り組むことになるのである。


II.外界の情報は情報処理システム内で利用可能な表現形式に変換され保存される。このプロセスを(22)という。我々が内的に利用可能なコード(表象)にはいくつかのタイプがある。
 Conrad(1964)は、視覚的あるいは聴覚的に提示した6文字から成るリストを系列再生させた際の誤りを分析した。視覚・聴覚提示のいずれにおいても、提示された文字を、それと(23)に類似な文字と誤って再生することが多かった。これは提示された文字リストを(23)コードで短期記憶に記憶していることを示すものと考えている。
 Posner(1969)は、継続的に2つの文字を提示し、被験者にその2文字が形態的に一致しているかどうか(形態マッチング)および音韻的に一致しているかどうか(名称マッチング)についての判断を求めた。その結果、同じ文字が提示される条件において、2つの文字の提示感覚が短い場合には、(24)の反応時間は(25)の反応時間よりも有意に短いが、時間感覚が長くなるにつれて、(24)の(25)に対する優位性は次第に認められなくなることを見出した。これは、(26)コードの減衰過程と、それに伴う(27)コード利用への移行を示しているものと考えられる。
 Wickens(1972)は、まず、果物カテゴリーに属する項目のみから成る刺激リストの再生を繰り返し被験者に求めた。その結果、再生成績が次第に低下する(28)が観察された。次に、果物とは異なるカテゴリーに属する項目から成るリストの再生を求めたところ、そのリストの再生成績は果物との(29)類似性の程度に依存した。これは、(30)と呼ばれる現象であり、(29)コードが短期記憶で使われていることを示す一つの例である。

III.Treisman の視覚探索課題では、被験者はディスプレイ上の複数の刺激の中にターゲットがありかどうかを判断し、できるだけ速く Yesキーあるいは Noキーのいずれかを押すよう求められた。この実験の結果、2つの条件において以下のような結果が観察された。
●A条件:ターゲットとディストラクター(ディスプレイ上のターゲット以外の刺激)が、色・方向・大きさ・奥行きなど、単一の視覚特徴によって弁別可能の場合、視覚探索に要する時間はディスプレイ上の刺激数に関わらず、ほぼ一定であった。
●B条件:ターゲットとディストラクターが複数の視覚特徴の組み合わせによって、はじめて弁別可能となる場合には、視覚探索に要する時間はディスプレイ上の刺激数が増えるにつれて長くなった。

 これらの結果は、次のように解釈することができる。(31)は機能的アーキテクチャーの基本機能のひとつと考えられ、そこでは自動的かつ並列的に(32)が検出される。したがって(32)によって背景から分離可能な対象は、特別の努力を払うことなく「(33)」するように見える。それに対して、視覚入力処理系は、(34)を自動的に検出することはできない。そのため(34)によって規定される対象を検出するためには、提示された刺激を一つずつ順番に探索していかなければならない。
 さらにB条件では、ディスプレイ上の刺激数の関数として与えられるYes反応の反応時間の傾きはNo反応の反応時間の傾きのほぼ半分の大きさであった。この結果は、ディスプレイ上の刺激の探索に(35)探索が用いられたことを物語っている。ちなみに、もしYes反応の反応時間の傾きとNo反応の反応時間の傾きとがほぼ等しいなら、(36)探索が用いられていたものと推測することができる。
 いずれにしても、この結果から、提示された刺激の中から目標となるターゲット刺激を検出する際の探索方法は、(37)が認知系に対して、いかなる出力を与えるかということに依存していると考えられる。このように、認知心理学が認知システムの行動を説明する際には、システムの持つ(37)についても考慮する必要がある。

IV.短期記憶に入った情報に対して保持のための努力が払われた場合、その情報は(38)に転送されると考えられている。情報の保持のための努力として有効なものに(39)をあげることができる。これは短期記憶内の情報を復唱するという作業である。Rundus(1971)は、自由再生課題を使って被験者に声に出して(39)させ、各項目の(39)された回数を測定し、自由再生結果と比較したところ、(39)される回数は記憶リストの先頭部ほど多かった。この結果から(40)における(41)はリストの先頭部の項目に対してより多くの(39)がなされるため、長期記憶に転送されやすいことによるものと考えられる。また、保持のための努力として(42)も重要である。これは、短期記憶内の情報を長期記憶内に既に保持されている知識と関連づけることによって長期記憶に取り込もうとする体制化のための心的操作である。
 一方、保持のための努力が払われなかった場合、短期記憶内の情報は消失すると考えられている。短期記憶からの忘却を説明する理論として2つのものがある。(43)によれば、保持のための特別な努力が払われない場合、短期記憶内の情報は時間経過とともに次第に減衰すると考えられている。これに対して(44)によれば、保持のための特別な努力が払われない場合、短期記憶内の情報はお互いに抑制し合う性質を持っており、この抑制作用の結果、短期記憶からの忘却が生じると説明する。さらに(44)によれば、抑制には2つの種類が存在する。短期記憶内に古くから存在した情報が新しい情報の記憶を妨げる(45)と新たな情報の記憶が過去に記憶された情報の保持を妨げる(46)である。また、Wickens(1972)の実験にみられた(47)からも明らかなように、抑制効果の強さは情報間の(48)の程度に依存し、(48)の高い情報ほど抑制作用は強いと考えられている。Peterson & Peterson(1959)は、(43)と(44)の妥当性を検討するために、(49)を被験者に提示し、保持時間中に逆唱課題を行わせた後に、その再生を求めた。Peterson & Peterson によれば、この実験では(49)しか提示されないので、(44)によれば忘却は起こらないはずである。ところが無意味綴りの再生成績は保持時間が長くなるにつれて低下した。この結果からPeterson & Peterson は(43)を支持した。これに対してKeppel & Underwood(1972)はPeterson & Peterson の課題では先行する試行で提示された記憶項目が後続の試行で提示される記憶項目に対して(50)の効果を持つことになり、(44)は忘却を予測しないとするPeterson & Peterson の議論を批判し、試行が進むにつれて再生成績が低下することを示し、(43)よりも(44)の方が妥当であると議論した。


<参考文献>
日野泰志氏のレジュメ