糖尿病の症状について

  糖尿病の典型的な症状は、のどが渇く水をよく飲む尿の回数や量が多いよく食べるのに体重が減る体がだるいなどです。これらの糖尿病の症状は、インスリンのはたらきが低下し、エネルギーの利用が不十分になることや、高血糖のために尿糖の排泄がふえ、それに伴って尿量がふえることによるものです。これらの症状は1型糖尿病では多くの症例でみられますが、2型糖尿病では必ずしも自覚しない場合が少なくありません。病歴をくわしく聞けば、長い経過中にこのような症状を自覚したとしても、外来を受診するときにはなんの症状もうったえないというケースもしばしばです。むしろ、多くの2型糖尿病では無症状であると考えるべきかもしれません。また、たとえ高血糖が持続しても本人の自覚症状はとぼしいことも注意する必要があります。症状がないからといって安心してはいけないのです。
 糖尿病患者にみられる症状として重大なものは合併症による症状です。目がかすむ、視力が低下してきた、足がしびれる、足が痛む、むくみが出てきた、おできができやすい、陰部がかゆい、性欲が低下し、性機能の低下がみられるなどの症状は、糖尿病の合併症や併発しやすい病気の症状です。これらの多くは、糖尿病が発症してかなりの期間がたってからみられるものですが、実際には検診で尿糖が陽性である、血糖が高い、ヘモグロビンA1Cが高いといった糖尿病と診断できる検査データがあってもなんの自覚症状(高血糖に基づく)もないために、長期間にわたって放置し、合併症の症状が出てはじめて受診する人は少なくないのです。

 糖尿病は、以前はWHO(世界保健機関)の分類ではインスリン依存型糖尿病( I 型)、インスリン非依存型糖尿病( II 型)、栄養障害関連糖尿病、その他の糖尿病の4つに分かれていました。最近、糖尿病の成因に関する研究が進み、分子生物学的手法をとり入れて、遺伝子異常に基づく糖尿病などが次々にあきらかになってきました。そうした成果をふまえて糖尿病の分類についても世界的に見直しがおこなわれ、WHOから診断と分類に関する暫定報告が発表されました。
 新分類では、1.インスリン依存型糖尿病を1型糖尿病、2.インスリン非依存型糖尿病を2型糖尿病と呼ぶこととし、さらに、従来の栄養障害関連糖尿病という分類を廃止し、3として特定の原因によるその他の糖尿病をまとめ、さらに4に妊娠糖尿病が位置づけられるようになりました。インスリン依存型、インスリン非依存型という従来の分類は、高血糖の状態を改善し、生命の危険を防ぐために、インスリン注射が不可欠かどうかという臨床像による分類の側面が大きかったのですが、病気の分類は本来、その原因に基づいて分類するのが望ましいとの観点から1型、2型と呼ぶことにしたのです。
 
1型糖尿病

 1型糖尿病とは、インスリンを産生・分泌する膵臓のβ細胞が破壊されてしまい、インスリンが分泌されず、その結果いちじるしい高血糖になり、それを改善するためにはインスリン注射が不可欠な病型です。β細胞の破壊の原因は自己免疫のしくみによることが多く(自己免疫性)、このタイプの発症早期の患者の血中には膵臓のβ細胞に対する自己抗体(膵島細胞抗体・ICA)やその他の自己抗体(インスリン自己抗体、グルタミン酸脱炭酸酵素・GADに対する抗体など)が高率に検出されることが知られ、1型糖尿病の診断の有力なマーカーになっています。いっぽう、1型と思われる症例のなかにも自己免疫の関与が明らかでないままインスリンの絶対的欠乏におちいる場合があり、原因不明(特発性)の1型に分類しています。
 1型糖尿病の特徴は25歳以下の発症(若年発症)が多く、非肥満のことが多く、発症は急激な場合が多く、口渇、多尿、多飲、体重減少など典型的な症状があらわれ、治療がおくれるといちじるしい高血糖とケトン体の上昇のため糖尿病性ケトアシドーシスという危険な状態におちいることもまれではありません。このタイプは、2型に比べると遺伝傾向が少ないことも特徴です。
 1型糖尿病の発症の引き金として、ウイルス感染も想定されており、実際にインフルエンザ、風疹、流行性耳下腺炎などのウイルス感染が先行する場合もみられます。
 成因的には1型糖尿病と考えられる症例でも必ずしも急激な経過をとらず、発症当初は症状も乏しく、食事療法や経口糖尿病薬で治療を受けている場合があります。このようなタイプは緩徐進行型の1型糖尿病と呼ばれています。

2型糖尿病

 2型糖尿病は、1型糖尿病のような明らかな特徴に乏しいタイプといえます。インスリン分泌低下にインスリン抵抗性が加わってインスリンの作用の不足が起こるもので、糖尿病患者全体の90%くらいを占めています
 2型糖尿病の臨床的特徴は、中年以降に発症することが多く、発症はゆるやかで、肥満している者が多いこと、家系内に糖尿病の者がいることが多い(遺伝性が濃い)ことなどです。すなわち、糖尿病を起こしやすい遺伝素因がある人に肥満、過食、高脂肪食、運動不足、ストレスさらには加齢などの環境因子、後天的な因子が加わって発症に至るもので、「生活習慣病」と呼ばれる糖尿病は2型糖尿病です。したがって、治療はまず食事療法、運動療法をおこなうことが大切で、生活習慣の是正によって肥満が解消できれば高血糖状態もいちじるしく改善することが期待できます。
 2型糖尿病の真の原因はいまのところ不明です。すなわち、なぜインスリン分泌が低下するのか、インスリン抵抗性が起こるのかという根本的な点は解明されておらず、特殊な糖尿病にみられるような単一遺伝子の異常はあきらかではありません。2型糖尿病は病態(インスリン分泌低下、インスリン抵抗性、高血糖の程度など)の点でも、成因の点でも不均一であり、多様な疾患が(いまのところは明確に区別できずに)集まっている状態ともいえます。
 ここで、インスリン依存型・非依存型と、1型・2型という呼び方の関連についてもう一度説明しておきます。インスリン依存型・非依存型という分類は、インスリン依存性の程度あるいは治療上インスリン注射が不可欠かどうかという観点に基づくものです。いっぽう、1型・2型は成因による分類の呼び方です。1型糖尿病の多くはインスリン依存型に進行しますので、1型=インスリン依存型と考えてもよい場合が多いのですが、なかには1型でも徐々に進行していく途中の過程でとらえればインスリン非依存型(状態)の場合もあるのです。また、逆に成因的には2型糖尿病であっても一時的にインスリン注射が不可欠な状態(インスリン依存状態)におちいることがあります。たとえば重症の感染症を合併した場合や、清涼飲料水を多飲していちじるしい高血糖とケトン体の上昇がみられ、ケトアシドーシスを呈するような場合です。後者のような状態を清涼飲料水ケトーシスと呼ぶことがありますが、若い2型糖尿病の肥満男性にときどきみられます。

その他の特定の機序・疾患によるもの

さらに細分類して、A「遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの」と、B「他の疾患、条件に伴うもの」に分けられます。これらを明確に分類したのは日本糖尿病学会の分類です。
Aは、単一遺伝子異常による糖尿病であり、インスリン遺伝子やインスリン受容体遺伝子異常などのほか、若年発症で常染色体優性、タタソール症候群と呼ばれるものやミトコンドリアDNAの異常による糖尿病などが含まれています。
 このタイプは、母系遺伝すること、難聴を伴うことが多いことなどの特徴があり、日本人では全糖尿病の1%程度と珍しいものです
 その他の糖尿病のBは、いわゆる二次性糖尿病であり、膵外分泌疾患、内分泌疾患、肝疾患、薬剤性などに細かく分類されています。
 ありふれた2型糖尿病と診断されているなかに、これらの内分泌疾患による二次性のものがひそんでいる場合があります。たとえば、脳下垂体腫瘍があり、それを摘出することによって、糖尿病が完全に治癒する可能性があります。薬剤性のものでしばしばみられるのは副腎皮質ホルモン服用中にみられる糖尿病です。

妊娠糖尿病

妊娠によって起こる糖尿病のことです。

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