未成年者との契約締結



1.問題提起

制限能力者が単独で行った法律行為は取消すことができることは、「契約の相手方」の項で述べたとおりです。
そこで、以下では、現実に制限能力者との間で契約を締結しなければならない場合に、事後的に取消がなされないようにするためには、具体的に誰を相手方として契約締結行為を行えばいいのか、また、その際に注意しなければならないことについて説明します。
この項では、まず、未成年者について説明し、次項以下で順に成年被後見人、被保佐人、被補助者について説明します。


2.未成年者とは

未成年者とは、いうまでもなく、年齢が満20歳に満たない者をいいます。
契約等の取引の相手方が未成年者であるか否かという点は、その取引を実際に行った時を基準に判断されます。従って、契約締結日が満20歳の誕生日の2日前だったとしても、それは未成年者との契約締結となり、20歳の誕生日が過ぎた後でも、なお、未成年者の側からその契約締結行為を取消すことが可能となります。


3.未成年者との契約

未成年者が法律行為(契約等)を行うには、その法定代理人の同意を得ることが必要とされています。つまり、未成年者と契約を締結する際には、その未成年者の両親の同意を得る必要があるのです(もし、両親の一方がいないときには他方の親の同意で結構ですが、両親が健在の場合には、原則として父母双方の同意が必要です。)。
また、未成年者の法定代理人は「代理人」ですから、その法定代理人である両親との間で契約締結交渉や、契約締結行為を行うこともできます。

(1)法定代理人の同意を得る方法
法定代理人の同意を得る方法については、法律上、定められていません。従って、口頭でも書面でも法定代理人(親権者)の同意を確認できればいいわけですが、できれば後日、法定代理人の同意を得ていなかった等々の主張を防止する意味でも、書面で確認することが望ましいでしょう。以下、参考までにいくつか同意を得る方法の考え方をあげて見ます。

@契約書等を作成する場合に、その契約書に直接法定代理人(親権者)の同意文言を明記してもらう方法
契約締結に際して契約書などの書面を作成する場合には、未成年者の法定代理人(両親)にも、未成年者とともに署名・捺印してもらうという方法が考えられます。この場合、父母双方の署名捺印を得るという形が原則です。父母の捺印の仕方としては、未成年者が署名・捺印した後で、その下に、その行為に同意する旨の記載をしてもらい、署名・捺印を得るという形になるでしょう(下記参考例@)。

A別途書面を発行してもらう方法
契約書のような書面を締結しない場合や、事前に契約書に法定代理人の署名等を得てきてもらうことができないような場合には、別途、親権者の同意書といった書面を作成してもらい、それを交付してもらうという方法が考えられます。(下記参考例A)。

(参考例@)
(住所)
山田太郎   印

山田太郎の上記契約の締結について同意します。
親権者 (住所)
      山田一郎  印
親権者 (住所)
      山田花子  印

(参考例A)
                同意書

○○○○ 殿

                    山田太郎
                    親権者 (住所)
                          山田一郎  印
                    親権者 (住所)
                          山田花子  印

山田太郎が貴殿との間で下記契約を締結することについて同意いたします。
                記
<契約の表示>
契約締結日 平成 年 月 日
契約の種類 売買契約
目的物
代金の額
履行期日
                               以上

(2)法定代理人によって契約を締結する方法

未成年者の親権者は「法定代理人」といわれ、未成年者の代理人として、未成年者に代わって未成年者を契約当事者とする契約を締結する権限を有しています。
例えば、未成年者が物を購入する際に、その親が未成年者の法定代理人として未成年者に代わって契約を締結することができるわけです。
この場合、契約書への署名方法は、参考例Bのようにするのが本来の形です。
ただ、実際の例として、法定代理人が直接未成年者の名前のみを表示して契約締結行為を行ってしまう場合が結構あります。ただ、この場合も、結局は法定代理人がその契約等の効力が未成年者に及ぶことを了解しているということは確認できるため、あえてその代理行為が無効であるといった問題は生じないと考えていいでしょう。実際の裁判例でも、法定代理人が直接未成年者名義で行った行為について、その有効性を認めています。

(参考例B)
(住所)
山田太郎 法定代理人
 山田一郎   印
 山田花子   印


4.未成年者が単独でできる行為

これまで述べてきたように、未成年者が法定代理人の同意を得ないでなした法律行為は取消しうるものとなります。
ただ、例外的に、以下の行為については、民法は未成年者が単独で行った場合でも取り消しの対象とならないとしています。
@単に権利を得る行為
A単に義務を免れる行為
B法定代理人が目的を定めて処分を許した財産をその目的の範囲内で処分する行為
C法定代理人が目的を定めないで処分を許した財産を処分する行為
D法定代理人によって営業を許可された未成年者がその営業に関して行った行為
以下、順に説明します。

(1)単に権利を得る行為
例えば、他人から贈与を受けるような場合です。もともと、未成年者の行為能力の制限という制度は、未成年者が取引社会における犠牲者になることを防止することを目的とするものですから、未成年者が単純に権利を取得するだけで、なんらの義務を負担することもない行為については、未成年者が不利益を被ることもないため、単独で行わせても問題ないからです。

(2)単に義務を免れる行為
未成年者が債務の免除を受ける旨の合意をする場合などです。この場合も、未成年者は単に義務を免れるだけで、新たな負担を負うものではないため、不利益を被ることはないため、単独でできるものとされています。

(3)法定代理人が目的を定めて処分を許した財産をその目的の範囲内で処分する行為
法定代理人(親権者)が、特定の目的で財産権の処分を事前に許していた場合には、その範囲内では未成年者は単独で有効に法律行為を行うことができます。例えば、親権者が未成年者が20万円以内でパソコンを買ってもいいと認めた場合には、20万円以内でパソコンを購入する売買契約については、未成年者が単独で締結できることになります。
これは、いわば、事前に一定の範囲内における親権者の同意があった場合といえます。
ただ、未成年者と取引をする者としては、本当に当該行為が親権者が処分を許した目的の範囲内の行為なのかという点についての確認をすべきです。その意味から、できれば書面による確認を取るなどの手当てをしておいた方が好ましいでしょう。

(4)法定代理人が目的を定めないで処分を許した財産を処分する行為
これは、いわゆる未成年者が親からもらった「お小遣い」等で買い物をするような場合です。このようなお小遣いは、未成年者が自由に使ってもいいものとして親が子供に渡したお金であることから、それについては未成年者といえども自由に使うことができるとされているのです。
ただ、例えばお小遣いを貯めたお金を頭金とし、残りを分割払いとして物を買うような場合には、頭金については法定代理人が処分を許したお金といえますが、以後の支払部分については、法定代理人が認めていない債務を未成年者が負担することになるため、なお、未成年者の側から取り消しができることになります。

(5)法定代理人によって営業を許可された未成年者がその営業に関して行った行為
未成年者について、法定代理人が一定の営業をすることを認めている場合については、その営業に関する行為に限っては未成年者といえども有効に法律行為ができるものとされています。
ただ、法定代理人は、未成年者が当該営業を行うことが適切ではないと考えたときは、いつでもその営業の許可を取消すことができます。そして、取消された場合には、以後、未成年者が単独で行った行為は、もはや許可された営業に関する行為ではなくなるため、取り消しの対象となることになります。

以上